ですね。正気の人間がキチガイに顔負けしたんですね。よっぽどキチガイじみた事が書いてあるんですね」
「……ところが、その内容の描写が極めて冷静で、理路整然としている事は普通の論文や小説以上なのです。しかも、その見た事や聞いた事に対する、精神異状者特有の記憶力の素晴しさには、私も今更ながら感心させられておりますので、只今御覧になりました『大英百科全書の暗記筆記』なぞの遠く及ぶところでは御座いませぬ。……それから今一つ、今も申します通り、その構想の不可思議さが又、普通人の所謂《いわゆる》、推理とか想像とかを超越しておりまして、読んでいるうちにこちらの頭が、いつの間にか一種異様、幻覚錯覚、倒錯観念に捲き込まれそうになるのです。その意味で、斯様《かよう》な標題を附けたものであろうと考えられるのですが……」
「……じゃ……このドグラ・マグラという標題は本人が附けたのですね」
「さようで……まことに奇妙な標題ですが……」
「……どういう意味なんですか……このドグラ・マグラという言葉のホントウの意味は……日本語なのですか、それとも……」
「……さあ……それにつきましても私は迷わされましたもので、要する
前へ
次へ
全939ページ中116ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング