ソンナ常識で想像出来ない或る場合とか、又はその余程アタマの構造の違った人間とかが実際に出現して、由来記の後の白紙ばかりの処をズット先の方まで開いて見た事があったとしたらドウであろうか。早い話が、この絵巻物の筆者呉青秀は、黛夫人の白骨になった姿だけを、悠々と落ち付いて、一番おしまいの処に描いているような事がありはしまいか。……それを黛夫人の妹の芬《ふん》女を初め、呉家の代々の人々から正木博士に到るまで、唯、常識で考えて、この中に描いてある死像を六体限りとアッサリきめているような事がありはしまいか。……そうして更に、その中でも、この絵巻物が人を発狂させる程の魔力を持っていることを看破するような頭を持った人間だけが、そこまで気を廻して開いて見ているとしたら、どんなものであろう……もしそんな事が在り得るとしたら、そこに何かしら落ち込んでいないとはドウして云えよう。……しかもその落ち込でいる何かしら[#「何かしら」に傍点]は、たといそれがドンナに微細なものであろうとも、スバラシク重大な意味をあらわす事になるではないか。この絵巻物を使って、この事件を捲き起した犯人の正体をズバリと指す事になるかも知れないではないか。否。もしかするとこの絵巻物の神秘力を一挙に打ち破って、一切の迷いを真実に還《かえ》す程の力を持った者であるかも知れない。……少く共そこまで調べて見た上でなければ、この絵巻物の中から何も発見出来なかったとはどうして云えよう。
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……呉一郎は姪の浜の石切場でこの絵巻物の白い処を一心に凝視していたという。しかもその時は既に半分呉青秀、半分は呉一郎の気持ちでいたものと推定されているから果して、どちらの気持ちでそうしていたものか判然しないのであるが、しかしいずれにしても、この絵巻物の白い処をズットおしまいの処まで見て行った……そうしてそこに落ち込んでいる何ものかを発見したに違いない事は容易に推定出来ると思う。
……その証拠に呉一郎は「この絵巻物の預り主の正体を知っている[#「この絵巻物の預り主の正体を知っている」に傍点]」と仙五郎爺さんに話しているではないか……。
……どうして……どうして私は今の今までこの事実に気付かなかったのだろう……。
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こうした考《かんがえ》を一瞬間のうちに頭に閃《ひら》めかした私は、又も、何者かに追駈《お
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