われる程の淡い、上品な香水の匂いに違いない事が解った。
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……面白いナ。この調子で行くと、まだ色んな物が発見出来そうだぞ。この黴臭い匂いと樟脳に似た木の香《か》が弥勒様の木像の中で滲《し》み込んだものである事は、誰でも考え付く事であろうが、併し、この香水の匂いにはチョット気の付く者がいなかったであろう。そうしてこの床《ゆか》しい芳香は、この絵巻物の前の持主を暗示するものでなくて何であろう。
……占めた。もしもこの上に、まだ誰にも気付かれていない何物かが在ったら最後……それは一本の髪の毛でも煙草の屑でもいい……犯人を決定する有力な材料になるのだぞ……
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……とさながらに自分自身が名探偵にでもなったように考えつつ、一層|勢付《いきおいづ》いて来た私は、絵巻物を頭の方から、逆に捲き込みながら、絵の処から由来記の文章の終っているところまで、裏表とも叮嚀に見て行ったが、先刻《さっき》は意地にも我慢にも正視出来なかった死美人の腐敗像が、今度は愛想《あいそ》もこそ[#「こそ」に傍点]もない只の顔料の配列としか見えなくなっているのには尠《すく》なからず驚かされた。而《しか》も、それは決して光線の具合でも何でもなかった。黛夫人の腐れ破れた唇から見え透く歯並の美しいところ、臓腑が瓦斯《ガス》を包んで滑らかに膨れ光っているところまで、細かに注意して見たが、何ともないものは、いくら見ても何ともない。私は人間の神経作用の馬鹿馬鹿しさにスッカリ張り合いが抜けてしまった。
……しかし……と思って尚《なお》よく注意してみると、初めの方は紙の地が幾分ボヤケているが、由来記のおしまいの方に近づけば近づく程、紙の表面がスベスベして上光りがしている。これは無理もない話で、最初に筆を執った呉青秀からして、初めの方ほど余計に開いたり捲いたりしたに決っている。又、その後《のち》この絵巻物を開いて見た呉家の先祖代々の者も同様で、最初私がした通りに、初めの完全な姿に近い所ほど念を入れて見たわけで、これは人情からいっても止むを得ないであろう……巻物の裏一面に何かキラキラ光る淡褐色の液体を塗ってある上に指の跡みたような白い丸いものが処々附いているようであるが、あまり滑らかでない紙の下から、粗い布目が不規則に浮き出しているのだから、何の痕跡《あと》だかハッキリと見分け難《
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