やのち》、約一週間の後《のち》に到り、漸次平静に帰すると共に、放神状態になり行く傾向を認められつつあり)

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◆備考[#「備考」は太字] (イ)事件発生当日午前十時半、出入を禁じありたる呉家の土蔵《くら》(三番倉と呼ばれおるもの)の内部を検するに、階下の板の間の入口に敷かれたる古新聞の上に、呉一郎の朴歯《ほおば》の下駄《げた》の跡と、モヨ子の外出|穿《ば》きの赤きコルク草履《ぞうり》が正しく並びおり、その傍《かたわら》より蝋燭《ろうそく》の滴下《したたり》起り、急なる階段の上まで点々として連《つら》なれり。
 階上の状況、及、被害者の屍体には格闘、抵抗、苦悶等の形跡を認めず。
 屍体《したい》頸部には絞縛《こうばく》したる褶痕《しゅうこん》と鬱血《うっけつ》、その他の索溝《さっこう》相交《あいまじ》って纏繞《てんじょう》せり、然《しか》れども気管喉頭部、及、頸動脈等も外部より損傷を認むる能《あた》わず。尚《なお》脂粉の香《におい》ある新しき西洋手拭《タオル》一本、屍体の前に置かれたる机の下に落在《らくざい》せるが、右は加害者の所持品にして、右兇行に使用したるものと認めらる。
 机上中央には鼻紙と覚《おぼ》しく、婦人の体臭ある四ツ折の半紙十数枚を重ねて拡げあり。その向って左端に同家の仏具の一たる真鍮の燭台を置き、百|匁《め》蝋燭一本を立てて点火したる跡あるが、後日検査の結果、点火後約二時間四十分を経て、消されたるものと推定されたり。
 尚《なお》、この他に新しき三本の百匁蝋燭が燐寸《マッチ》の箱と共に机の下に置きありたるが、以上四本の蝋燭の上部、及、中央部附近に印せられおる数多の指紋は、悉《ことごと》く、被害者モヨ子の左右手各指の指紋のみにして、加害者呉一郎のものは一個も存在せず。且《か》つ、燐寸《マッチ》の箱よりも被害者の指紋のみが検出されたる事実より見れば、前記四本の蝋燭は、被害者自身が持ち来りたるものにして、手ずから燐寸《マッチ》を擦《す》りてその中の一本に点火し、机の左端に置きたる事疑う余地なし。(その他八代子の足跡等に関する記述略)
 (ロ)同夜九時、被害者の屍体、九州帝国大学医学部法医学教室に到着、直ちに余(W氏)執刀、舟木医学士立会の下に解剖、同十一時終了の結果、死因は頸部の圧迫、絞扼死《こうやくし》と判明す。且つ、被害者が何等かの
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