すると一パイ喰うかも知れないと思ったんだが……いけねえいけねえ……。
アッハッハッハッハッハッハッハッ……。
ああア――ッ。くたびれたアッ……ト……。
ねえ先生……話し賃に煙草を一本下さいな…………。
……オヤア――ッ。誰も居やがらねえ……。
ここは監房の中だ……おかしいな。俺あサッキから一人で饒舌《しゃべ》ってたのかな……フーン……イッタイ何を饒舌《しゃべ》ってたんだろう……。
……桐の花が、あんなに散ってやがる…………。
……アッ……忘れていたッ…………。
俺あ龍代に復讐するつもりだったんだ……彼女《あいつ》は俺に肱鉄《ひじてつ》を喰わせやがったんだ……妾《わたし》をオモチャにするつもり……って冷笑しやがったんだ。だからその通りにしてやったんだ。前科者を亭主に持たして、一泡吹かしてくれようと思ったのが、間違ってコンナ事になってしまったんだ。あべこべに俺がキチガイ扱いされる事になったんだ。
エエッ……コンナ篦棒《べらぼう》な……不公平な……。
俺あ谷山家に怨みがあるんだ。ココを出してくれ。不法監禁だぞ畜生……ドウスルカ見ろ……龍代の阿魔《あま》……。出してくれ出
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