しい身姿《みなり》をした雲雀がこう云いました。
「リイチョ、リイチョ。リイチョ、リイチョ。チョ、チョ。チョン、チョン」
「まあそれは何と云うこと」
「チョングリイ、チョングリイ、チョングリイ」
「グリイチリ、グリイチリ。チリロ、チリロ」
「ちっともわからないわ」
「チリル、チリル。ルルイ、ルルイ。リイツク、リイツク、リイツク、リイツク」
「つまらないわねえ……そんな言葉じゃ……」
 オシャベリ姫がこう云いますと、今度は集まっていた雲雀がみんな一時にしゃべり出しました。
「ピークイ、ピークイ。ピークイ、ピークイ。クイッチョ、クイッチョ。クイッチョ、クイッチョ。チョ、チョ。チョン、チョン。チョングリ、チョングリ。チイヤ、チイヤ。チャルイヨ、チャルイヨ。チャルイヨ、チャルイヨ」
 オシャベリ姫はあんまり八釜《やかま》しいのでびっくりして、
「まあ。何てやかましいんでしょう。そんなにしゃべっちゃ、私の耳が潰《つぶ》れてしまうよ。やめて頂戴、やめて頂戴」
 と云いましたが、雲雀たちはなかなかやめません。なおもよってたかってしゃべりつづけます。
 オシャベリ姫はあんまり雲雀たちにシャベりつけられて、これはたまらぬと両手で耳を押えて逃げだしますと、雲雀たちはなおもしゃべりつづけながら追っかけて来ます。
 その上にいつどこから出て来たか、雲雀の兵隊や巡査までが繰出して来て、
「キイキイ、ピイピイ」
 と叫びながら、広い野原を逃げまわるオシャベリ姫を追っかけまわしました。その恐ろしいこと……。
 オシャベリ姫はもう夢中になって泣きながら逃げまわっていましたが、やがて草の中にあった深い井戸の中へ真逆様《まっさかさま》に落ち込んで、そのままズンズンどこまでも落ちて行きました。
 姫は又ビックリして、
「アレ、助けて」
 と叫びましたが、あんまりの恐ろしさに眼をまわしてしまいました。
 けれども間もなく又気がついて見ますと、今度はいつ連れて来られたのか、立派な寝床の上に寝かされて、頭の下には柔かい枕が置いてあります。
 どうしたのかしらんと思って、そこいらを見まわしますと、又ビックリしました。
 枕元には人間の大きさ位の青蛙の看護婦が二人、黄金《きん》色の眼を光らして、白い咽喉《のど》をヒクヒクさせながら腰をかけています。
 青蛙の看護婦はオシャベリ姫が眼をさましたのをみると、すぐに立ち上
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