あまり涙を流したものもありました。
このとき、ルルは鐘つき堂の入り口に立って、あまりの嬉しさにブルブルと震えながら両手を顔に当《あて》ておりました。その手を妹のミミがソッと引き寄せて接吻《せっぷん》しました。
兄妹《きょうだい》は抱き合って喜びました。
「お父様が湖の底から見ていらっしゃるでしょうね」
けれどもまあ、何という悲しいことでしょう。そうして又、何という不思議なことでしょう。
お寺のお坊さんの手でルルの作った鐘が鳴らされました時、鐘は初めに只一度|微《かす》かな唸《うな》り声を出しましただけで、それっ切り何ぼたたいても音を立てませんでした。
ルルは地びたにひれ伏して泣き出しました。ミミもその背中にたおれかかって泣きました。
「これこれ。ルルや、そんなに泣くのじゃない。おまえはまだ小さいのだから、鐘が上手に出来なくてもちっとも恥かしいことはない。ミミももう泣くのをおやめなさい」
と、いろいろに村の人は兄妹を慰めました。そうして、親切に二人をいたわって家まで送ってやりました。
ルルは小供ながらも一生懸命で鐘を作ったのでした。
「この鐘こそはきっといい音が出るに違いな
前へ
次へ
全26ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング