の支那へ出立しがけに、先へ着いてからチャンコロと間違えられねえ用心にと思いまして、横浜の彫辰《ほりたつ》ってえ職人に頼んで、御覧の通り見っともねえ傷を身体《からだ》中に附けてもらっておりましたが、そいつが香港で物を言いまして、いい加減な悪党と見られたもので御座いましょう。ちょっとした料理屋の下まわりに落付きましたような事で……ヘエ……。
ところが又、持って生れた因果とでも申しましょうか。チャン料理とバタ料理が手に附いて来てイクラか名前が知れるようになりますと、又もや前に申しましたような三道楽の虫がムクムクと動き初めましたもので……殊にアチラの道楽と申しますと御承知の通り日本のとは違ってアクの利き方が段違いなんで……とてもアクドイ無茶苦茶なものですから一たまりもありませぬ。間もなくモノスゴイ地獄みてえなインチキ賭博に引っかかってスッテンテンにされてしまいましたので、口惜し紛れにその賭場のテーブルの上に引っくり返ってくれました。そのインチキのネタを滅茶滅茶にバラしてくれましたが、何しろ多勢に無勢ですから敵《かな》いません。十何人の毛唐や、支那人を相手に大喧嘩を致しました揚句、半殺しにノサ
前へ
次へ
全58ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング