妙なものかと思い続けながらこの遺書を書いた。そうして今やっとここまで書き上げた。
私は今からこの鼓を打ち砕いて死にたいと思う。私の先祖音丸久能の怨みはもうこの間老先生の手で晴らされている。この怨みの脱け殻の鼓とその血統は今日を限りにこの世から消え失せるのだ。思い残すことは一つもない。
しかし私はこんな一片の因縁話を残すために生れて来たのかと思うと夢のような気もちにもなる。
底本:「夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓」角川ホラー文庫、角川書店
1998(平成10)年4月10日初版発行
初出:「新青年」博文館
1926(大正15)年10月
※このファイルは、ディスクマガジン『電脳倶楽部』に収録されたものをもとにしています。
入力:上村光治
校正:浜野 智
1998年11月10日公開
2003年10月15日修正
青空文庫作成ファイル:
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