を一人でも二人でもいいからこの世に残してくれ。あやかしの鼓にこもった霊魂《たましい》の迷いを晴らす道はもうわかったろうから。
私はお前達兄弟の腕に惚れ込み過ぎた。安心してこの鼓を取りに遣った。そのためにあのような取り返しの附かないことを仕出かした。私はお前の親御様へお詫びにゆく。
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私は死ぬかと思う程泣かされた。この御恩を報ずる生命《いのち》が私にないのかと思うと私は蒲団を掴み破り、畳をかきむしり、老先生の遺書《かきおき》を噛みしだいてノタ打ちまわった。
しかしまだ私の業《ごう》は尽きなかった。
私は鼓を抱えて、その夜の夜汽車で東京を出て伊香保《いかほ》に来た。
温泉宿に落ちついて翌日であったか、東京の新聞が来たのに高林家の事が大きく出ていた。その一番初めに載っていたのはなつかしい老先生の写真であったが、一番おしまいに出ているのは私が見も知らぬ人であるのにその下に「稀代の怪賊高林久弥事旧名音丸久弥」と書いてあったのには驚いた。その本文にはこんなことが書き並べてあった。
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▲今から丸三年前大正十年の春鶴原未亡人の変死事件というのが
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