ように工夫してあることを知った。それは外衣のセルを擦り切るだろう、――それから返り、そしてまたその動作をくりかえすだろう、――二回――三回と。振幅がもの凄く広くなり(約三十フィートか、またはそれ以上)、しゅっしゅっと音をたてて降りてくる勢いが鉄の壁さえ切り裂くくらいであっても、数分間というものはそれのすることはやはり私の外衣を擦り切ることだけであろう。ここまで考えてくると私の考えはとまった。この考えより先へは行けなかった。私はしつこくこの考えに注意を集めた、――ちょうどそうすれば鋼鉄の刃の下降をそこで[#「そこで」に傍点]とめることができるかのように。私は偃月刀が衣服を切って通るときの音を――布地が摩擦されることが神経にさわる奇妙なぞっとするような感覚を、わざと考えてみた。こうしたくだらないことをいろいろと歯の根が浮くくらいになるまで考えてみた。
 下へ――じりじり下へ、振子は這《は》い降りてくる。私はその振子の横に揺れる速度と、下へ降りてくる速度とを照らしあわせて、狂気じみた快感を感じた。右へ――左へ――遠く広く――悪鬼の叫びをあげて! 私の心臓めがけて、虎のような忍び足で下へ! こ
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