れてからずっと海浜に育って来たのではあるが、それまでは海の近くにいたことが一度もなかったような気がした。タールや潮《しお》の香も何か物珍しいものだった。私は、いずれも遠く大洋を渡って来た、実に珍奇な船首像を見た。また、耳に環を嵌《は》め、頬髯をくるくるとちぢらせ、タールまみれの弁髪を下げて、肩で風を切りながら、不恰好《ぶかっこう》な水夫歩きをやっている、老練な水夫たちをたくさん見た。たといそれだけの人数の王様や大僧正を見たにしたところで、私はそれ以上に喜びはしなかったろう。
 そして私自身も航海に出ようとしているのだ。呼子を吹いて号令する水夫長や、弁髪を垂れて船唄を歌う海員たちと一緒に、スクーナー船に乗って航海に出ようとしているのだ。まだ知らない島へ向けて、埋められた宝を捜しに、航海に出ようとしているのだ!
 私がなおもこういう喜ばしい夢想に耽っている間に、私たちは不意に或る大きな宿屋の前へ出て、大地主のトゥリローニーさんに出会った。大地主さんは、丈夫な青い服を着用して、すっかり船の士官のように着飾り、顔をにこにこさせながら、水夫の歩き方を素敵にうまく真似て、戸口から出て来るところだっ
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