くの白紙のところに記《しる》してある二三の場所の方位と、フランスと、イギリスと、スペインの金《かね》を共通の価格に換算する表くらいしかなかった。
「倹約家《しまつや》だ!」と医師が叫んだ。「この男は騙《だま》されるような人間じゃなかったですな。」
「ところで今度はもう一つの方だ。」と大地主さんが言った。
紙の方は、封印の代りに指貫《ゆびぬき》で幾箇処も封緘してあった。多分、私が船長のポケットの中にあるのを見つけたあの指貫だろう。医師はその封緘を非常に注意して開けると、ばらりと現れ出たのは、或る島の地図(註二八)で、緯度経度、水深、山や湾や入海の名、それから船をその海岸の安全な碇泊所に入れるに必要らしいあらゆる細目なども書いてあった。その島は長さ約九マイル、幅五マイルで、肥った竜が立ち上ったといったような形をしていて、陸で囲まれた良港が二つあり、中央部には「遠眼鏡《スパイグラース》山」と記された山があった。それより後の日附の書き加えが幾つかあったが、とりわけ、赤インクで書いた十字記号が三つあって、」――その二つは島の北部に、一つは南西部にあり、この後の十字記号のそばには、同じ赤インクで
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