そんなに間近に見たことがそれまでに一度もなかった。彼は六フィート以上もある背の高い人で、それに相応して幅もあり、無骨な豪傑風の顔は、永い間の旅行ですっかり荒れて赤らみ皺がよっていた。眉毛は真黒で、すぐぴりぴり動いた。そのために、怒りっぽいというのではないが、気短で傲慢といったような顔付に見えた。
「お入りなさい、ダンス君。」と彼はすこぶる厳かに、また丁寧に言った。
「やあ、今晩は、ダンス。」と医師は頷いて会釈しながら言った。「それから、ジムも、今晩は。どういう風の吹き※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]しでここへやって来たのかね?」
税務監督官は硬くなって直立しながら、学課をやるように一部始終の話をした。すると、二人の紳士がどんなに身を乗り出し、互に顔を見合せ、驚きと興味とのために煙草を吸ふのも忘れていたかは、諸君にお目にかけたかったくらいであった。私の母が宿屋へ引返したところまで聞くと、リヴジー先生は腿をぽんと打ち、大地主さんは「えらいぞ!」と叫んで、その途端に持っていた長いパイプを炉の鉄格子にぶっつけて折ってしまった。話のすむ大分前から、トゥリローニーさん(というのは、覚え
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