」と別の男が言った。「ジョージ金貨(註二〇)をやるからな、ピュー、ぎゃあぎゃあいうのはよせよ。」
ぎゃあぎゃあいうとは当嵌《あてはま》った言葉であった。こういう反対を受けてピューの憤怒はますますひどくなった。ついにはまったく逆上してしまって、右に左に盲滅法彼等に打ってかかり、彼の杖で一人ならずしたたか殴りつけられる音がした。
彼等の方も、盲の悪漢を罵り返し、ひどい言葉で嚇《おど》しつけ、彼の杖を掴んで※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]《も》ぎ取ろうとしたが駄目だった。
この喧嘩《けんか》で私たちは助かったのだ。こうしてまだ盛んに暴《あば》れている間に、村の側にある丘の上から別の物音が聞えて来た。――駆けて来る馬の蹄の音である。それとほとんど同時に、生垣の方からピストルの音がしてぱっと火花を発した。これは明かに危険を知らせる最後の合図であった。なぜなら、海賊どもは直ちに向を変えて四方八方へ分れて走り出したから。或る者は入江伝いに海の方へゆき、或る者は丘を斜に横切ってゆきなどして、半|分《ぷん》とたたないうちに彼等の影も見えなくなり、ピューだけが残された。彼を見棄てて行っ
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