幾らか利目《ききめ》があったらしい。二人の男ががらくた物の間をここかしこと探し始めたが、しかし、私には、本気にやっているのではなくて、始終自分の身の危険に半ば気を配っているように思われた。一方、他の連中は街道にぐずついて立っていた。
「この馬鹿野郎どもめ、何万両が手に入《へえ》ろうってのに、尻込みしてやがるなんて! あれを見つけ出しゃあ、手前《てめえ》たちは王様みてえに金持になれるんだ。それがここにあるってことがわかってながら、もじもじして突っ立ってやがる。手前たちの中にゃビルに面と向えた奴が一人もなかったんだ。それを俺がやったんだぞ、――この盲人《めくら》がな! それだのに手前たちのために俺は運をなくしなきゃならねえ! 馬車を乗り※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]せようってのに、這《へ》えつくばいの乞食になって、ラムを貰って歩かなきゃならねえんだ! 手前たちにビスケットについている虫だけの勇気でもありゃあ、奴らを掴めえられるんだがなあ。」
「ちぇっ、ピュー、己たちぁダブルーン金貨を手に入れたんだぞ!」と一人がぶつぶつ言った。
「奴らがあのいまいましい物を隠したんかも知れねえ。
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