、結局、別の方角にあるリヴジー先生のところへなら進んで馬を走らせようという者が幾人もいたけれども、私たちを助けて宿屋を護ろうとする者は一人もいなかったのである。
臆病はうつると世間では言う。しかしまた、一方、議論は非常に勇気をつけるものである。で、銘々が言うだけのことを言ってしまうと、母は皆に言った。父親のないこの子のものであるお金は損したくない、と母は言い切った。「あなた方《がた》がどなたも来て下さらないなら、ジムと私《あたし》が行きます。」と母が言った。「戻って行きますよ、来た道をね。いやどうも有難うござんした。図体《ずうたい》ばかり大きくて、胆っ玉の小さい方《かた》ばかりですね。死んだっていいから、私たちはあの箱を開《あ》けてみます。すみませんがその嚢を貸して下さいな、クロスリーさんのおかみさん。私たちの貰う権利のあるだけのお金を入れて来るんですから。」
もちろん、私は母と一緒に行くと言った。また、もちろん、人々はみんな私たちのことを無鉄砲だと呶鳴《どな》った。が、それでもなお、一緒に行ってやろうという者は一人もなかった。ただ、私たちが襲われないようにと、弾丸を籠めた一挺のピ
前へ
次へ
全412ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 直次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング