うように単に緯度経度が、書き加えてあるところも少しはあった。
 この記録はかれこれ二十年以上も続いていて、年月がたつにつれて一々の記入高が大きくなってゆき、終りに、五六度間違った寄算をした後に総高が出してあって、「ボーンズの身代」という言葉が書き加えてあった。
「何のことだか私にはさっぱりわからん。」とリヴジー先生が言った。
「真昼のように明白だよ。」と大地主さんが大声で言った。「これはあの腹黒の畜生めの会計簿さ。この十字記号は奴らの沈めた船か掠奪した町の名の代りなんだ。金高はあの無頼漢の貰った分前だし、それから、曖昧ではいけないと奴《やっこ》さんの思ったところでは、何とか幾分はっきりと書き足してあるだろう。それ、『カラカス沖』とあるね。これは、その海岸の沖で海賊どもに乗り込まれた不幸な船があったということなんだよ。可哀そうに、その船に乗っていた人たちはねえ、――とっくの昔に珊瑚になっているだろうよ。(註二七)」
「なるほど!」と医師が言った。「さすがに旅行家は違ったものだ。いや、その通り! そして、この男の地位が上るにつれて、金高が殖えていますね。」
 この帳簿には、その他に、終り近くの白紙のところに記《しる》してある二三の場所の方位と、フランスと、イギリスと、スペインの金《かね》を共通の価格に換算する表くらいしかなかった。
「倹約家《しまつや》だ!」と医師が叫んだ。「この男は騙《だま》されるような人間じゃなかったですな。」
「ところで今度はもう一つの方だ。」と大地主さんが言った。
 紙の方は、封印の代りに指貫《ゆびぬき》で幾箇処も封緘してあった。多分、私が船長のポケットの中にあるのを見つけたあの指貫だろう。医師はその封緘を非常に注意して開けると、ばらりと現れ出たのは、或る島の地図(註二八)で、緯度経度、水深、山や湾や入海の名、それから船をその海岸の安全な碇泊所に入れるに必要らしいあらゆる細目なども書いてあった。その島は長さ約九マイル、幅五マイルで、肥った竜が立ち上ったといったような形をしていて、陸で囲まれた良港が二つあり、中央部には「遠眼鏡《スパイグラース》山」と記された山があった。それより後の日附の書き加えが幾つかあったが、とりわけ、赤インクで書いた十字記号が三つあって、」――その二つは島の北部に、一つは南西部にあり、この後の十字記号のそばには、同じ赤インクで、船長のたどたどしい筆蹟とはよほど違った」小さな、綺麗な手蹟で、「宝の大部分はここに。」――と書いてあった。
 裏には、同じ手蹟で、次のようなさらに詳しいことが書いてあった。――

「北北東より一ポイント(註二九)北に位して、遠眼鏡の肩、高い木。
 骸骨島東南東微東。
 十フィート。
 銀の棒は北の隠し場にあり。東高台の傾斜面にて、黒い断巌に面を向けてその十尋南のところに見出すを得。
 武器は、北浦の岬の北方、東に位し四分の一ポイント北に寄れる砂丘に容易に見出さる。
[#地から2字上げ]J・F。」

 これだけだった。が、簡短なものではあり、私には理解の出来ないものではあったけれども、これを見ると大地主さんとリヴジー先生とは大喜びだった。
「リヴジー君、」と大地主さんが言った。「君は厄介な医者商売なんぞはさっそくやめだね。明日《あす》私はブリストルへ立つ。三週間のうちに――三週間だぜ!――いや、二週間で――十日でだ、――我々はイギリスでも最上の船とだね、君、それから選り抜きの乗組員を手に入れるのだ。ホーキンズは船室給仕《ケビンボーイ》になって来るんだ。お前は素敵な船室給仕になるよ、ホーキンズ。君は、リヴジー君、船医だ。私は司令官になる。レッドルースと、ジョイスと、ハンターもつれてゆこう。我々は、順風を受けて、速く航海し、何の苦もなくその場所を見つけ、どうにも出来んほどの――あり余るほどの金を手に入れて、――それからはずっと金が湯水のように使えるようになるんだ。」
「トゥリローニーさん、」と医師が言った。「私は御一緒に行きますよ。それからジムも行くことは私が請合います。ジムはきっとこの企ての誉《ほまれ》たる者になるでしょう。ただ、私には気にかかる人が一人だけいます。」
「で、それぁだれだい?」と大地主さんが大声で言った。「君、其奴《そやつ》の名を言い給え!」
「あなたです。」と医師が答えた。「あなたは口を慎めないからです。この紙のことを知っているのは私たちだけじゃありません。あの今晩宿屋を襲った奴らや――確かに大胆な向う見ずの暴れ者たちだが――それから、例の帆船《ラッガー》に残っていた者どもも、また、恐らくあまり遠くもないところにいるその他の奴らも、みんな、水火を冒してもその金を手に入れようと決心しているんです。私たちは出帆してしまうまでは一人も離れてはなりません。ジ
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