の馬鹿が聖書を切ったんだ?」
「ああ、そら見ろ!」とモーガンが言った。――「そうら見ろ。おいらの言わねえこっちゃあねえ。そんなことをしていいことになるはずがねえって、おいらが言ったんだ。」
「ふうむ、手前たちは仲間で相談してきめたんだな。」とシルヴァーが言い続けた。「じゃ手前らはみんなぶらんこ往生することになると思うな。どの阿呆の間抜めが聖書なんぞを持ってたんだ?」
「ディックだよ。」と一人が言った。
「ディックだと? じゃあディックはお祈りをするがいいや。」とシルヴァーが言った。「奴の好運もこれまでだ、ディックのな。そいつぁ間違えっこなしだぜ。」
しかしこの時例の黄ろい眼をしたのっぽの男が口を出した。
「おしゃべりは止《や》めろ、ジョン・シルヴァー。ここにいる船員は、規則通りにみんなで会議を開いて、お前に黒丸をつきつけたんだ。お前も、規則通りに、そいつを裏返して、そこに書《け》えてあることを見てくんねえ。それからしゃべるがいいさ。」
「有難うよ、ジョージ。」と料理番が答えた。「お前はいつも仕事はてきぱきしてるし、規則は十分心得てるし、ジョージ、己ぁお前を見るなあ好きだよ。さてと、とにかく、こりゃ何だな? ははあ! 『免職』と、――なあるほど、そうだな? なかなかうまく書えてあるわい、確かにな。刷った物みてえだ、まったくさ。ジョージ、お前の手蹟《て》かい? まあ、お前はすっかりここにいる船員の中での頭《かしら》になってるんだな。お前は次にゃ船長《せんちょ》になれるぜ、きっとだよ。すまねえが、ちょいとその松明《たいまつ》をも一度取ってくんねえか? このパイプが消えたんだ。」
「さあ、おい、」とジョージが言った。「ここにいる船員を馬鹿にするのもいい加減にしねえ。お前はおどけてるつもりなんだろう。がお前はもう駄目だよ。その樽から下りて来て、投票するがよかろうて。」
「手前は規則を知ってるって言ったように思うがな。」とシルヴァーは軽蔑したように答えた。「ともかく、手前が知らねえにしろ、己は知ってるんだ。だから己はここにいる、――己はまだ手前たちの船長だぞ、いいか、――手前たちが自分の苦情を言って、己がそれに答えてやるまではだ。それまでの間は、手前らの黒丸は堅《かた》パン一つほどの値打もねえんだ。それがすんでから、考えるとしよう。」
「おお、」とジョージが答えた。「お前はち
前へ
次へ
全206ページ中163ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 直次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング