小屋の外へ出てしまった。すると残りの連中も順々にそれに倣《なら》った。一人一人が出てゆく時に敬礼をし、一人一人が何とか言訳を添えた。「規則に従ってね。」と一人は言った。「水夫部屋会議で。」とモーガンは言った。そんな風に何とか言って皆が出て行き、後にはシルヴァーと私とだけが松明と共に残された。
船の料理番は直ちにパイプを口から取った。
「さて、ねえおい、ジム・ホーキンズ。」と彼はしっかりした囁き声で言った。その声はやっと聞き取れるくらいのものだった。「君はもう少しで殺されるかも知れんところだ。いや、もっとずっと悪いことにゃ、拷問されるかも知れんところだ。奴らは己を排斥《へえせき》しようとしてるからな。だが、いいかね、己はどんなことがあっても君に味方してやる。己にゃそういうつもりはなかったんだ。そうだ、君があんなにぱすぱすとしゃべるまではなかったんさ。己は、あんな大金《てえきん》を手に入れ損《そこ》ねるし、おまけに首を絞《し》められるとなったんで、やけっぱちになりかかっていた。だが己にゃ君が頼りになる男だってことがわかったんだ。己は自分にこう言ったのさ。ジョン、お前はホーキンズに味方しろ。そうすりゃホーキンズはお前に味方してくれるだろう。お前はあの子の最後のカルタ札だし、それから、ジョン、あの子はお前の最後のカルタ札だってこたぁ違えねえんだぞ! 持ちつ持たれつだ。お前が自分の証人を救えば、あの子はお前の首を救ってくれるだろうよ! とね。」
私はぼんやりとわかりかけて来た。
「君は何もかも駄目になったと言うんだね?」と私は尋ねた。
「うん、まったく、そうなんだ!」と彼は答えた。「船はなくなる、首もなくなる、――そういった有様さ。一度は己もあの湾を捜してみたんだよ、ジム・ホーキンズ。だがスクーナー船なんてまるで見えやしねえ。――で、己も強情者だが、へこたれてしまったよ。あの会議を開いてる奴らはね、まったくの馬鹿野郎の臆病者さ。己は君の命をあいつらから救ってあげるよ、――出来る限りはだ。だがね、いいかい、ジム、――その代りにだ、――君はのっぽのジョンがぶらんこになるのを救ってくれるんだぜ。」
私は当惑した。彼の求めていることはそれほど望みのないことと思われたのだ。――何しろ、彼は永年の海賊で、初めから終りまで張本人なんだから。
「僕に出来ることは、してあげるよ。」と私は
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