た。しかし、その声にはラムを飲んだらしい調子があった。
 とうとう、私はもう柵壁の方へ戻れるだろうと思った。私は低い砂の出洲《です》をかなりずっと下っていた。この出洲は碇泊所を東で抱え、半潮(註六三)の時には骸骨《スケリトン》島と連っているのである。そして今、私は立ち上ると、出洲をもう少し下ったところに、低い灌木の間から、かなり高い、色が妙に白っぽい岩が一つだけ立っているのが目に入った。私は、これがベン・ガンの話したあの白い岩かも知れない、いつかボートが要《い》ることになるかも知れないが、それを捜す処はわかった訳だ、と思いついた。
 それから森の中を※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]って行って、柵壁の裏手、すなわち海岸向きの側へ再び着き、間もなく味方の人たちに大いに歓迎された。
 私は間もなく自分の一部始終の話をしてしまって、あたりを見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]し始めた。その丸太小屋は角材にしない丸木のままの松の幹で造ってあった、――屋根も、壁も、床《ゆか》も。床は数箇処砂地の面から一フートないし一フート半も高くなっていた。戸口のところにはポーチがあり、そのポーチの下に、例の小さな泉が、幾らか奇妙な性質の人工の溜池――というのは、船の大きな鉄釜の底を抜いて、船長の言葉で言えば「船荷を満載した時の水準線まで」砂の中に埋めたものなのであるが――の中へ湧き出ていた。
 小屋の骨組の他にはほとんど何も残されてはいなかった。が、一つの隅に、炉床の代りに敷いてある板石と、火を入れる古い銹びた鉄の籠とがあった。
 円い丘の傾斜面と柵壁の内側全部とは、この小屋を建てるために樹木をすっかり伐り払ってあった。その切株で見ると、ずいぶん立派な喬木の林が伐り倒されたことがわかった。土は大抵、その樹木を取除けた後に、雨に流しやられたり、風の吹き寄せた砂に埋められたりしていた。ただあの釜から流れ下っている小川のところだけでは、苔や、何かの羊歯《しだ》や、地を這っている小さな灌木などが、こんもり生い茂っていて、砂地の中にまだ緑色をしていた。柵壁のすぐ近くの周りに――防禦のためには近過ぎると皆は言ったが――森林がまだ高く密に繁っており、陸の側は皆樅だが、海の方は鮮色樫がよほどまじっていた。
 前に言ったあの寒い夕風は、この粗末な建物のありとあらゆる隙間からぴゅうぴゅう吹き込
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