がある。これが大事なことなんだよ。男と男の話としてね。よし、さあ、」――とやはり私を掴まえながら――「もう行ってもいいだろうよ、ジム。それからね、ジム、もしお前さんがシルヴァーに逢っても、ベン・ガンを売るようなことはしめえな? 拷問にかけられたってしゃべりゃしめえな? 大丈夫だね。それから、もしあの海賊どもが浜で野営するならばだ、ジム、朝にはきっと人死《ひとじに》があるだろうぜ。」
 この時に轟然たる音が彼の言葉を遮り、一発の砲弾が樹立を突き裂いて、私たち二人が話していた処から百ヤードと離れていない砂地の中へ落下した。次の瞬間には二人とも別々の方向へ逃げ出していた。
 それから後のたっぷり一時間は、砲撃が頻りに島を震わせて、砲弾が絶えず森に落ちた。私はその恐しい弾丸に始終追われて、あるいは追われているような気がしたのであるが、隠れ場所から隠れ場所へと逃げ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]った。しかし、砲撃がそろそろ終りかける頃には、弾丸が一番多く落ちる柵壁の方へはまだ行く勇気はなかったけれども、再び幾らか元気が出かけていた。そして、東へ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]り路をしてから、岸辺の樹立の間をそろそろと下りて行った。
 太陽はちょうど沈んだばかりで、海風《うみかぜ》は森の樹をざわざわと鳴らして吹きまくり、また碇泊所の灰色の水面を波立たせていた。潮も遠くまで退いていて、広々とした砂地が現れていた。空気は、日中の暑さの後に、冷えて来て、私のジャケツを通して身に滲み込んだ。
 ヒスパニオーラ号はやはり前に投錨した処にいた。けれども、果して、海賊旗《ジョリー・ロジャー》――海賊の黒い旗――をその斜桁上外端《ピーク》にひらひらと翻していた。私が見ている時にもまだ、また赤く砲火が閃き轟然たる砲声がして、大きな反響を起し、もう一発の砲弾が空中をびゅうっと飛んで行った。それが最後の砲撃だった。
 しばらくの間私は横って、攻撃の後の騒ぎを見ていた。柵壁の近くの渚では、水夫たちが斧で何かを叩き壊していた。後でわかったが、例の小形端艇《ジョリボート》であった。彼方の、川口の近くには、樹立の間に焚火が盛んに燃えていて、その地点と本船との間を一艘の快艇《ギッグ》が絶えず行ったり来たりしており、前にはあんなに不機嫌だった水夫たちは、オールを漕ぎながら子供のように喚いてい
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