ろで、ジム、ほんとのとこを言っておくれよ。あれぁフリントの船じゃねえのかい?」と尋ねた。
この言葉を聞くと、私にはうまい考えが思い浮んだ。私は味方を一人見つけたと思いかけ、すぐに彼に答えてやった。
「フリントの船じゃないよ。それにフリントはもう死んじゃった。だが、君が訊《き》くから、ほんとのことを言ってあげるんだが、――あの船にはフリントの子分が何人か乗っているんだ。私たち残りの者はそれで困ってるんだよ。」
「一本――脚の――男はいねえかね?」と彼は喘ぐように言った。
「シルヴァーかい?」と私は尋ねた。
「ああ、シルヴァーだ! そういう名前《なめえ》だったよ。」と彼が言った。
「あの男は料理番《コック》なんだ。そしてまた張本人なんだよ。」
彼はまだ私の手頸を持っていたが、これを聞くとそれをぎゅっと握り締めた。
「もしお前がのっぽのジョンの使に来たんなら、己《おれ》あ豚みてえにやられるんだ。それぁ己にゃわかってる。だがお前はどこにいると思う?」と彼は言った。
私は直ちに心をきめて、彼に、返事として、私たちの航海の一部始終や、私たちが今どんな苦境に陥っているかということを、話してやった。彼は非常に熱心な興味をもって聞いていたが、話し終えると、私の頭を軽く叩いた。
「お前さんはいい子だ、ジム。」と彼が言った。「で、お前さん方《がた》はみんな困った羽目になっているんだね? よし、じゃあ、ベン・ガンを信用しなせえ、――ベン・ガンはそれにゃあお誂《あつれ》え向きの男だよ。ところで「その大地主さんて人は人を助けるのに太《ふと》っ腹《ぱら》になれそうな人だとお前さんは思うかね?――お前さんの話だと、その人も困った羽目になってるということだが。」
私は大地主さんはこの上なく心の大きい人だと言ってやった。
「そうかい。だがね、」とベン・ガンは答えた。「俺は門番にして貰ったり、仕着《しきせ》をして貰ったり、そんなようなことをして貰《もれ》えてえ、って言うつもりじゃねえんだぜ。そんなこたぁ俺の目当じゃねえんだよ、ジム。俺の言うつもりなのは、大地主さんが、もう或る人間のものも同様な金の中から、大枚、まあ千ポンドぐれえ、分けて下さりそうかい? ということなのさ。」
「それぁきっとして下さると思うよ。」と私は言った。「ほんとは、みんなが分前を貰うことになってるんだから。」
「それから[#
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