ルの名著「フランス革命史」に負うところが極めて多かった。この物語の文体、思想等についても、カーライルの影響を示しているところが見られる。なお、作者が制作の準備中に知人であるカーライルに自分の目的に役立ちそうな数冊の参考書の借用を請うたところ、カーライルはただちに荷車二台に満載したフランス革命に関する文献をディッケンズの邸宅に送り届けたという。
「二都物語」は「バーナビー・ラッジ」に次ぐディッケンズの第二の歴史小説であり、また彼の最後の歴史小説である。歴史小説と言っても、時代を過去に採り、背景を歴史的事件に求めただけであって、登場する人物はことごとく非歴史的人物であり、作者自身の純然たる創造になる人物のみである。本篇の主人公である、自己犠牲的な深い愛によって進んで断頭台の下に立つ弁護士シドニー・カートンは、疑いもなく近代小説の群像中でも最も魅力ある性格の一であるに違いない。その他、その正義感のために暴虐な貴族の手によってバスティーユ牢獄に投獄され、十八年間監禁されていた医師アレクサーンドル・マネット、その娘リューシー・マネット、フランスの貴族の地位と財産とを自ら抛棄してイギリスで自活する
前へ
次へ
全341ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 直次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング