れ、ただちに巨万の読者に迎えられた。これは八分冊に分れ、各分冊に「ピックウィク倶楽部」の挿画以来フィズの名で知られたハブロット・ブラウンの挿画が二葉ずつ入り、第六分冊までは定価各一シリング、最後の第七第八分冊は合本二シリングであって、その最後の分冊に標題紙《タイトルページ》や目次などと共に緒言が附せられた。制作の前及びその間に作者が異常な苦心を重ね努力を払い時日を費したことは彼の手記や書簡などによって窺い知られる。
 本篇の手法に関する意図について、作者は制作中の書簡にこう書いている。「私は、真実に迫った人物、しかし彼等が対話によって自分自身を現すよりも以上に物語そのものが現すべき人物がいて、各章ごとに興味の加わる、画のように叙述した一つの物語[#「画のように叙述した一つの物語」に傍点]を作るこの小さな仕事に専心している。他の言葉で言えば、(中略)人物を出来事それ自身の臼の中で搗き砕き、その人物から彼等の興味を打ち出して、出来事の物語を書くことが出来ると思ったのである。」
 フランス革命に取材したことについては、作者が年来絶えず繰返して読み、決して厭きることのなかった、トマス・カーライ
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