ィーユの牢獄の中にいるつもりで頻りに靴を造っている変り果てた白髪のマネット。名を問われると「北塔百五番」とのみ繰返す永年の囚人。その永年の監禁のために暗雲に鎖された智力。父と娘との初めての対面。娘の髪の毛や声によって微かに甦った遠い昔の記憶。娘の永い言葉によってようやくごく微かに甦った智能。夜になってから、訪問者たちはこの甦る人ムシュー・マネットを馬車に乗せてイギリスに向ってただちにパリーを立つ。パリー市の城門でドファルジュだけが下りて別れる。街灯の下から大空の永遠の灯――星――の下へと走る馬車。第三章の駅逓馬車の中で幾度も繰返されたあの空想の対話が再びロリーの耳に戻って来て、巻を閉じる。
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第二巻 黄金の糸
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〔二十四章から成る。序曲に次ぐ展開部である。最も長くかつ変化に富む。年月は一七八〇年三月から一七九二年八月に至るまでの十二箇年余、場面はロンドンとパリーとフランスの田舎とにわたる。この作中の諸人物はほとんどすべて登場し、女主人公《ヘロイン》が彼女の黄金の糸を巻いてゆき、第三巻で起る
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