いということの他《ほか》には、何一つ得るところがなかった。この時、これまでずっと法廷の天井を眺めていた例の仮髪《かつら》の紳士が、小さな紙片に一二語書いて、それを捻《ひね》って、その弁護士に投げてやった。弁護士は、訊問の次の合間にその紙片を開いて見ると、非常な注意と好奇心とをもって被告をうち眺めた。
「君はそれが確かに[#「確かに」に傍点]被告であったということを十分に確信していると今一度言えますね?」
その証人はそれを十分に確信していると言った。
「君はこれまでに誰でも被告に非常に似た人を見たことがありますか?」
被告と見違えるくらいに似た人は見たことがない(と証人が言ったのであるが)とのこと。
「では、あの紳士、あそこにいるわたしの同僚を、」とさっき紙を投げてよこした男を指さしながら、「よく見たまえ。それから次に被告をよく見たまえ。どう思います? 二人は互に非常に似ていやしませんか?」
二人をそうして見比べてみると、その同僚弁護士の風采が放埓なというほどではないにしても無頓著でじだらくなのを差引すれば、二人が互に非常に似ていることは、証人ばかりではなく、その場に居合せたすべて
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