》によるとヘロオデス・アッティクス(9)のような金持で――また彼の富はそのようにたやすく手に入れたものだそうであった――が、入ってきた。私にはすぐこの男の低能なことがわかったので、もちろん、自分の手練を揮《ふる》うに持って来いの相手として目をつけた。私はたびたび彼と賭博をやり、賭博者のいつもやる策略で、自分の罠《わな》にいっそううまく陥らせるために、彼にかなりの額を勝たせるように仕向けた。とうとう、もう自分の計略が熟してきたので私は彼と仲間の自費生(プレストン君)の部屋で(これを最後の終決的な会合にしてやろうと堅く思いながら)会った。プレストン君というのは二人とも同じく懇意なのであるが、彼のために言っておけば、彼は私の企図《たくらみ》はほんのちょっとばかりも疑っていはしなかったのである。この会合にさらにもっともらしい文《あや》をつけるために、私は八人か十人ばかりの連中が集まるように仕組み、それから骨牌《かるた》がいかにも偶然に持ち出されたように見え、しかも私の目をつけているその阿呆《あほう》自身が言い出して始まるように、よほど気をつけてやったのだった。この陋劣な題目について簡単に言って
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