ら金をまき上げて、そうでなくとも莫大《ばくだい》な収入をいやが上にも増す手段としていた、ということはとても信じられないであろう。けれども、事実はそうだったのだ。そして、あらゆる立派な正しい情操に反するこの罪科のあまりに大きいというそのことが、疑いもなく、それが行われながら罰せられなかったことの唯一《ゆいいつ》のではなくとも主要な理由となったのだった。実際、私の放縦な仲間たちのなかで、あの快活な、率直な、寛大なウィリアム・ウィルスン――オックスフォードでもいちばん高潔でいちばん気前のいいあの自費生――彼の乱行は青年の放肆《ほうし》な空想のさせる乱行にすぎず――彼の過失はまねのできぬ気まぐれにすぎず――彼のいちばん暗い悪徳も無頓着《むとんじゃく》な血気にまかせてする放蕩にすぎない(と彼の取巻き連の言う)あのウィリアム・ウィルスン――がそういうようなことをしようと疑うよりは、むしろ自分の気が確かかどうかを問題にしようとしない者がいたろうか?
もうはや二年もそんなふうにして私はいつも首尾よくやってきたが、そのころ、その大学へ、グレンディニングという若い成金《なりきん》の貴族――人の噂《うわさ
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