に持っている溌剌《はつらつ》たる想像の力に微笑《ほほえ》んだのだった。またこの種の懐疑は、自分がイートンで送った生活の性質のために減りそうにもなかった。私がそこですぐさま向う見ずに跳びこんでいった無分別な愚行の渦《うず》は、自分の過去の月日の泡《あわ》だけを除いてすべてを洗い去り、堅実な、または真面目な印象は一つ残らずさっさとのみこみ、以前の生涯《しょうがい》の全く浮薄なものだけしか記憶に残さなかったのだ。
 しかし、私は、このイートンでの自分のあさましい乱行――学校の目を巧みにのがれながら、学校の規則などものともしなかった乱行――をいちいちたどって書こうとは思わぬ。愚行の三カ年は、ただ私に悪徳の根ぶかい習慣をつけ、またちょっと普通以上に私の背丈を伸ばしただけで、なんの得るところもなく過ぎ去った。が、そのころ、一週間もめちゃくちゃな放蕩《ほうとう》をしたのち、私はもっとも放縦な学生の数人を自分の部屋での秘密な酒宴に招待したのであった。私たちは夜がよほど更《ふ》けてから集まった。自分たちの乱行をまちがいなく朝までもつづけるつもりだったのだから。酒は豊かに満ちあふれていたし、それ以外のおそ
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