たぎにエラガバルス(2)だってやれないような大悪無道へ跳びこんだ。どうしためぐり合せで――どんな一つの出来事からこんな悪いことになったのか、私が語るあいだ、しばらく耳を貸していただきたい。死は近づく。それを前ぶれする影は、私の心をやわらげる。ほの暗い谷(3)を歩みながら、私は世の人々の同情を――むしろ憐《あわ》れみをと言いたいのであるが――切望している。自分がいくらかは人間の力ではどうにもできない境遇の奴隷《どれい》であったということを、私は世の人々に信じてもらいたいのだ。これから語ろうとする詳しい話のなかで、私のために、広漠《こうばく》とした罪過の砂漠のなかにいくつかの小さな宿命[#「宿命」に傍点]のオアシスを、捜し出してもらいたいのだ。以前にもこれほど大きな誘惑物は存在したではあろう。が、しかし、少なくともこんなふうに[#「こんなふうに」に傍点]人間が誘惑されたことは前には決してなかった――たしかに、こんなふうに[#「こんなふうに」に傍点]落ちこんだことは決してなかった――ということを認めてもらいたいのだ。――これは誰でも認めずにはいられないことであるが。とすると、こんなふうに苦し
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