くあり、恐れの心はよほどあり、不安な好奇心はうんとたくさんあった。倫理家には、ウィルスンと私自身とがまったく切っても切れない仲間であったということは、つけ加えて言う必要もないであろう。
疑いもなく、二人のあいだにあるその変則的な関係が、私のウィルスンにたいするすべての攻撃(それは公然とやるのも、こっそりとやるのもどちらもたくさんあったが)を、真面目《まじめ》なきっぱりした敵対でやるよりも、からかいか悪戯《いたずら》(ただふざけているように見せかけながら苦しめるのである)の方面に向けさせたのにちがいない。しかしこのことについての私の努力は、もっともうまく自分の計画を仕組んだときでさえも、決してみな成功するというわけにはゆかなかった。なぜかというと、鋭い冗談をやりながらも、ただ一つの弱みも持たず、また人から笑われることを絶対に許さない、あのたかぶらない静かな厳格さというものを、私の同名者はその性格にたくさん持っていたからである。実際、私はたった一つしか弱点を見出すことができなかった。それは、たぶん生れつきの病気からくる身体の特殊性にあるもので、私ほど知恵が尽きて他にどうにもしようがなくな
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