メールストロムの旋渦
A DESCENT INTO THE MAELSTROM
エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe
佐々木直次郎訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)神の業《わざ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)水深三十五|尋《ひろ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ページ左下]
〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔Maelstro:m〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
−−
[#ページ左下]
[#ここから17字下げ]
自然における神の道は、摂理におけると同様に、われら人間[#「われら人間」に傍点]の道と異なっている。また、われらの造る模型は、広大深玄であって測り知れない神の業《わざ》にはとうていかなわない。まったく神の業はデモクリタスの井戸よりも深い[#「まったく神の業はデモクリタスの井戸よりも深い」に傍点]。
[#ここで字下げ終わり]
[#地付き]ジョオゼフ・グランヴィル
[#改ページ]
私たちはそのとき峨々《がが》としてそびえ立つ岩の頂上にたどりついた。四、五分のあいだ老人はへとへとに疲れきって口もきけないようであった。
「まだそんなに古いことではありません」と、彼はとうとう話しだした。「そのころでしたら、末の息子と同じくらいにらくらくと、この道をご案内できたのですがね。それが三年ほど前に私は、どんな人間も遭ったことのないような――たとえ遭ったにしても、生き残ってそれを話すことなんぞはとてもできないような――恐ろしい目に遭って、そのときの六時間の死ぬような恐ろしさのために、体も心もすっかり参ってしまったものでしてね。あなたは私をずいぶん[#「ずいぶん」に傍点]老人だと思っていらっしゃる――が、ほんとうはそうじゃないのですよ。たった一日もたたないうちに、真っ黒だった髪の毛がこんなに白くなり、手足の力もなくなって、神経が弱ってしまいました。だからいまでは、ほんのちょいとした仕事にも体がぶるぶる震え、ものの影にもおびえるような有様です。こんな小さい崖《がけ》から見下ろしても眩暈《めまい》がするんですからね」
その「小さい崖」の
次へ
全22ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 直次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング