沿った道にすすんだ。自分はその話を聞きながら、その男に対する反抗心が盛んになった。
上M村を通り過ぎると、道は深い渓に沿った山の中腹を廻っている。
「いいえ、私は学校の方には関係はありません。」
「そうですか。」
判事さんは、私が学校の教員ででもあるように思ったらしい。それから職業のことを聞かれた。私は自分の、ちょっと人に言っても分りにくい職業の話をした。
この対話で、かたわらの話は少し圧えられたらしい。八つの目は私達の方に向っていた。が、私と判事さんとが、その人達と関係のなさそうな様子をして話していると、イムバネスは急に気負い立ったように、大きい声を出して話をつづけた。その話は田舎の議論家らしくついに議会のことの上に行き、政治上のことにまで及んだ。判事さんは始終、にがにがしい笑いを顔のどこかに見せていた。そして、私達は超然とした調子で、低い声を出して、切れ切れに話をした。
道はますます山の中にはいった。
私は判事さんにこの地方の犯罪の種類について二つ三つ話を聞いた。この人はM市から、折々この地方に出張して、T町の裁判所にくる人であると言うことだ。まだこの地方に来はじめてから
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