遠野へ
水野葉舟
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)家《うち》に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|順《じゅん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)小さい町へ[#「町へ」は底本では「町の」]つづいている
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一
「いま、これから東の方に向って、この花巻を発つ。目的地の遠野に着くには、今夜、夜が少し更けてからだそうだ。」――この頃は、もう少しずつ雪が解けはじめたので、途中が非常な悪路だと聞いた。私は今日の道の困難なことを想像しながら、右の文句をはがきに書いた。私はこんどその遠野に帰っている友人に会うために、東京を出て来たのである。
ところへ、宿の女がはいって来て、馬車がくる頃だから用意をしろという。私は急いで、そのはがきに午前九時十分と時間を書き入れた。それを留守宅の宛名にして、それから、ほかの一枚にも同じ文句を書いて、来る路に仙台で世話になった家《うち》に宛てた。
手ばしこく洋服を着た。宿屋の勘定は前にすましてあったから、用意ができると玄関に出て行った。宿のものに送られて、靴を穿きながら
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