ニ思い、この気持をはっきり彼にうち明けた。で、とうとう私のパリ滞在中は、一緒に住もうということになった。そして、ちょうど、どんな迷信か問題にもしなかったが、とにかく迷信のために長いこと住み手のなかった、郭外《フォーブール》サン・ジェルマンの辺鄙《へんぴ》な淋しいところにある、崩れかけた、古い、怪しげな邸を借りた。その家賃や、また、二人に共通した気質である、いささか空想的な憂鬱にふさわしいように家具を備えつける費用を、私のほうが彼よりはいくらか暮し向きが楽だったので、私が受け持つことにした。
ここでの我々の日常生活が世間に知れたなら、我々は狂人と――もっともたぶん、害のない狂人と――思われたにちがいない。我々の隠遁《いんとん》は完全なものであった。訪問者は一人もよせつけなかった。実際、我々の隠れ家は私の以前の仲間たちには注意深く秘密にしておいたし、デュパンがパリで世間と交渉を絶ってからよほど年がたっていた。我々はただ二人だけで暮していた。
夜そのもののために夜を溺愛《できあい》するというのが、私の友の気まぐれな好み(というよりほかに何と言えよう?)であった。そしてこの奇癖《ビザルリー
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