うえつづけないことにする。なぜなら、この推測の基礎になっているぼんやりした考察は、僕自身の理知で認めることのできるほどの深さを持ってはいないのだし、また、それを他人に理解させようなんて、できることとは思えないからね。だから、それをただ推測と見なして、推測として話すことにしよう。もし、そのフランス人が僕の想像どおり実際この凶行に関係がないとするなら、昨晩、僕が帰りに『ル・モンド』(これは海運業専門の新聞で、水夫たちのよく読むものだ)社へ頼んでおいたこの広告を見て、その男はきっとこの家へやって来るだろうよ」
彼は私に一枚の新聞を渡した。それには次のように書いてあった。
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「捕獲。――ボルネオ種のたいそう大きい黄褐色の猩々一匹。本月――日早朝〔殺人事件のあった朝〕、ボア・ド・ブローニュにて。所有者(マルタ島船舶の船員なりと判明した)は、自己の所有なることを十分に証明し、その捕獲および保管に要した若干の費用を支払われるならば、その動物を受け取ることができる。郭外《フォーブール》サン・ジェルマン――街――番地四階へ来訪されたし」
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「どうしてそ
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