る獣のと同じ性質のものだ。しかし、僕にはとてもこの恐ろしい怪事件の細かいところはわからないね。そのうえ、争っていたような声が二つ[#「二つ」に傍点]聞えて、一つはたしかにフランス人の声だったと言うんだからねえ」
「そうさ。それから君は、この声について証言がほとんどみんな一致してあげている言葉――あの『|こらッ《モン・ディユ》!』という言葉を覚えているだろう。証人の一人(菓子製造人のモンターニ)がこれをたしなめる、または諫《いさ》める言葉だと言っているが、それはこの場合もっともなんだ。そこで、僕は謎を完全に解く自分の見込みを、この二つの言葉の上に主として立てているんだよ。一人のフランス人がこの殺人を知っていたのだ。彼はその凶行には少しも加わっていないということはありうる。――いやおそらくたしかにそうだろう。猩々はその男のところから逃げたのかもしれない。彼はそのあとを追ってあの部屋のところへまで行ったのかもしれない。が、その後のあの騒ぎのために、とうとう捕えることができなかったのだ。猩々はまだつかまらないでいるのだ。こういう推測――それ以上のものだという権利は僕にはないからね――を僕はこの
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