迹シの部屋部屋を歩きまわったり、中庭へ行ったりした。一人の憲兵がずっと付きそってきた。調査は暗くなるまでかかり、それから我々はひき上げた。家へ帰る途中で、私の連れはある新聞社へちょっと立ちよった。
前に言ったように、友にはさまざまなむら気があって、〔Je les me'nageais〕(私は逆らわないでそっとしておいた)――英語にはこの文句にちょうど当るものがない――であった。ところが今度は、翌日の午《ひる》ごろまでは、この殺人事件に関する会話はいっさいしたくないというのが彼の気分なのであった。その時になると、彼は突然に、凶行の現場にどんなことでも変った[#「変った」に傍点]ことを認めはしなかったかと私に尋ねた。
「変った」という言葉に力を入れた彼の様子には、なぜか知らないがなにか私をぞっとさせるものがあった。
「いいや、変った[#「変った」に傍点]ことってなにもなかったよ」と私は言った。「少なくとも、僕たち二人が新聞で見たこと以上にはなにもね」
「あの『ガゼット』はこの事件の異常な恐ろしさを理解していないようだよ」と彼が答えた。「しかしあんな新聞のくだらん意見なんぞは相手にせずにおこ
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