竄キいのだ)星の方へ向けて横目で見ることが、星をはっきり見ることになる、――星の輝きがいちばんよくわかるのだ。その輝きは眼を星に十分に[#「十分に」に傍点]真正面に向けるにつれてぼんやりしてゆく。そりゃああとの場合には実際たくさん光線が眼に入るさ。が前の場合にはもっと安全な感受能力があるのだ。過度の深さは考えを惑わし力を弱める。あまり長く、一心に、あるいはまともに、じっと見ていれば、金星だって大空から消えて見えなくなるかもしれんよ。
 この殺人事件について言えばだ、それについての僕たちの意見を立てる前に、僕たち自身で少し調べてみようじゃないか。調査は僕たちを楽しませてくれるだろうよ。〔楽しみというのはこんな場合に用いるには妙な言葉だと思ったが、私は何も言わなかった〕それにまた、ル・ボンには前に世話になったことがあって、僕はその恩を忘れてはいない。出かけて行って、僕たち自身の眼でその家を調べてみよう。僕は警視総監のG――を知っているから、必要な許可をとるのは簡単だろう」
 許可が得られたので、我々はさっそくモルグ街へと出かけた。そこはリシュリュー街とサン・ロック街との間にあるみすぼらしい
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