ス室の扉は、一同がそこへ着いたときには、内側から錠が下りていた。まったくひっそりしていて、――呻《うめ》き声もなんの物音も聞えなかった。扉をこじあけたときには、誰もいなかった。裏の部屋も表の部屋も窓が下りていて内側からしっかりしまっていた。その二つの部屋のあいだの扉はしまっていたが、錠はかかっていなかった。表の部屋から廊下へ通ずる扉は錠がかかっていて、鍵は内側にあった。四階の廊下のつき当りにある表側の小さな部屋は開かれていて、扉が少しあいていた。この部屋には古い寝台や、箱や、その他のものが詰めこんであった。これらは念入りに取りのけられ捜索された。家じゅう残るくまなく丹念に捜索された。煙突のなかは『煙突掃除器』で上げ下げした。家は屋根裏部屋(マンサルド)のある四階建であった。屋根の引窓はきわめて固く釘《くぎ》づけにされ、――幾年も開かれなかったように見えた。争う声の聞えたときと部屋の扉を押しあけたときとのあいだの時間については、証人らの陳述はさまざまであった。ある者は三分しかたたぬと言い、ある者は五分もたっていたと言った。扉はようようのことで開いた。
 葬儀屋、アルフォンゾ・ガルシオの証
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