上もある橋掛の芸術的価値を歎美して喜ぶものである。実際舞台芸術として能楽の価値の少くも半分は、この橋掛にあるやうな気がする。橋掛に欄干が附いて、一の松、二の松、三の松と、三本の小さい松がその前に植ゑてあるのも単に面白いばかりでなく、それには深い意味があらう。技巧的にはそれ等の松は、役者の所作する目標であらうけれども、この簡単な装置がどんなに表象的に見え、どんなに暗示的効果をあげるか知れない。又能が昔松林の間で行はれたことのある名残だとのみいつて済まされるものでない。
底本:「日本の名随筆87 能」作品社
1990(平成2)年1月25日第1刷発行
1991(平成3)年9月1日第3刷発行
底本の親本:「野口米次郎選集 第三巻―文芸殿」春陽堂文庫出版
1943(昭和18)年9月発行
入力:渡邉つよし
校正:門田裕志
2002年11月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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