る。盆釜は、うなゐ[#「うなゐ」に傍線]・めざし[#「めざし」に傍線]等と称せられる年頃のともがらが、別に竈を造つて、物を煮焚きして食べる。此時に、小さい男の児たちが、其を毀しに行つて喜ぶ様な事が行はれて居る。
盆釜と同じもので、春には、男の児等が鳥小屋を作つて、籠ることがある。此は、男の児が、くなど[#「くなど」に傍線]に奉仕する物忌みなのである。盆釜とは、幼女の、処女の仲間入りする為のものである。
此に対して、田植ゑに先だつて、処女が山籠りをする行事は、処女から、成熟した女になる式である。即、日本では、子供から男・女になるまでに、式が二度あつた。男の方では、袴着の式――謂はゞ褌始めである。女の方では、今言うた裳着の式――腰巻始めとでも言うたらよいか。其裳着の式が二度ある。少女の時と、成熟した女になる時の式とである。併し此は、一度にしたりする事があるから、一概に言へぬが、まづ二度行はれるのがほんとうである。
此式は、田植ゑの一月前、処女が山籠りをするので、躑躅の枝を翳して来るのが其標である。此が早処女《サウトメ》となつて、田植ゑの行事をするのだ。此以前に行はれるのが、盆釜と言はれる式
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