変出世したものである。
これからだんだん大きな役者の女房役をするようになり、菊五郎・団十郎、先代の左団次の女房として長い間勤めた。その因縁で、この間死んだ左団次とも、関係が深かった。菊五郎の女房役をしていた間は、源之助は自分の身体に合ったものを、自由に出して行けた。団十郎になると、女形は大分辛かったらしい。団十郎が活歴物をするようになり、黙阿弥の裏に居た桜痴が表面に出て来た時代が丁度源之助の青年から壮年の頃であったから、生憎《あいにく》なものと言えるだろう。彼は団十郎に跟《つ》いて行かなかった。活歴は演劇史上の邪道ということになっているが、私は世間の人のいうよりは、この活歴に面白いものを感じている。源之助としては、この時に十分研究すべきであった。彼は、舞台も生活も、昔の儘《まま》の役者型で押して行った。明治十七・八年頃から東京を去る二十年頃迄が、源之助の一番盛りの時であった。源之助の競争者といえば後の歌右衛門、当時の福助であるが、彼は上品ではあり、芸もすなおであるが、色気の点では、源之助の敵ではなかった。であるからその儘で行って居れば歌右衛門よりも高い地位にも上ったであろう。
役者とい
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