の祖先のひこほゝでみ[#「ひこほゝでみ」に傍点]の樣な心に、なつて頂いては、困ると思うたからなのです。
わたしは都會人です。併し、野性を深く遺傳してゐる大阪人であります。其上、純大和人の血も通ひ、微かながら頑固な國學者の傳統を引いてゐます。氣短く思はないで、直《ナホ》く明《アカ》く淨《キヨ》く力強い歌を産み出す迄の、あさましい「妣《ハヽ》の國《クニ》」の姿を見瞻つて、共にあくうざず[#「あくうざず」に傍線]の叫びを擧げて頂きたい、と願ふのです。
力の藝術といふ語は、あなたと、わたしとでは、おなじ内容を具へてゐないかも知れませぬ。わたしの「ますらをぶり」なる語に寓して考へた力は、所謂「たをやめぶり」に對したものです。人に迫る力がある、鬼神をも哭かしめるに足るなど評せられる作品の中にも、「ますらをぶり」の反對なものも隨分とあります。其も一種の力であります。萬葉に迷執してゐるわたしは、ますらをぶりに愛着を斷つことが出來ませぬ。警察官の心が、荒ましくなつて、「萬葉調の歌をよせ。ますらをぶりを棄てろ」と怯かす世になつても、萬葉調を離れることは出來ないと信じてゐます。が、茲に立ち入つて言ふと、わた
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