、なま/\しい對象を掴んで來ることも、其表現の如何によつては、否認はなされぬでせう。若し反對とすれば、問題は岐れて、「短歌の本質」といふ方向へ向ひます。わたしは要するに、對象よりも心に在るのだ、と思ひます。純化というても、語弊はありますが、ともかく雜駁性を整理する氣魄[#「雜駁性を整理する氣魄」に傍点]如何に因ることだと思ひます。大分がさつ[#「がさつ」に傍点]な傾きは在つたとは言へ、啄木は短歌の本質上の限界を乘り超えて、「才の奇蹟」を見せたではありませんか。此點、あなたにかれこれ言ふのは、「我は顏」を恥しく思ひます。
先祖・家門・財産などいふ問題に對して、あれだけ苦痛を經驗して來られた岡さんの歌には、子規居士・左千夫先生等になかつた發見が光つてゐます。きつと、岡さんのこれからの歌は、アララギの歴史上に特筆せられる一分野を開いて來られるでせう。所謂苦勞人のない歌壇には、岡さんに創まる一運動を阻拒する權利を有つた一人の歌人もない筈です。
赤彦さんは、あなたと比べると、著しく智慧の點に於ては、都人的であると思ひます。此は尠くもあなたゞけには、迢空は善く考へた、と納得して貰へることゝ思ひます
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