の「東歌」によく現れて居る。此がだん/\に変つてほんとうの恋愛詩を生む。日本の恋愛詩は、奈良朝の初めになつて、純抒情詩となつた。人麻呂の恋愛詩にも、誇張がある。其が、劇的になつて、万葉集に現れて居る。万葉集の終りの頃に出て居る歌でも、此事実を見出し得る。
又、ほかひ人[#「ほかひ人」に傍線]は、長歌を謡つたばかりではなく、短歌を謡つたと思はれるものがある。中臣《ナカトミ》[#(ノ)]宅守《ヤカモリ》・狭野[#(ノ)]茅上[#(ノ)]郎女の短歌が沢山ある。此歌などは、万葉集では殆ど、終りに近い時代のものであるが、或はほかひ人[#「ほかひ人」に傍線]の新しく歌つたものではなからうかと思はれる。つまり、抒情詩は、奈良朝の盛んな時代より出来て来るが、純抒情詩の時代は、平安朝へ這入つてからである。奈良朝の抒情詩が、在原業平に系統を引いて、純粋の抒情詩になつた。併し、発生に於て、当座の頓才奇智のものや、男女のかけ合ひ[#「かけ合ひ」に傍線]の歌であるが為に、其影響は後代まで続いた。
一方に於て、此かけ合ひ[#「かけ合ひ」に傍線]の問答が、日本文学に於ける変つた形を生み出した。多くの人がよつて、両方
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