が、いろんな関係でそれが出来なかったので、臣下の位に下げ、源の姓を与えられた。併、これも後に源氏平氏と対称して考えられて来る、あの源氏と違った内容を持っている。此事については少し説明しなければならぬ。
昔の宮廷は、我々が考える程、政治的に大きな勢力を持っていられた訣《わけ》ではない。唯、神を祭り、神に接近した生活をしていられた為、信仰上の中心となっていた、其が習い久しく、中世になっても、宮廷を上に据えない形の世の中と言うものは、考えられなかったのである。政治上の実権を持っている豪族達にとっては、此宮廷を自分の方へ寄せて来る事が、何よりも必要であった。天子の御子が幾人もおいでになる時は、古代には、各の豪族が、御子を引き取って養育し、自分達の方で育った方を次の位にお即けしようとして、争いを起す事さえあった。そうした幾世の後に、花のような藤原氏の時代が来た。藤原氏一族が勢を専にした時代の歴史を顧みて、どうしてあれ程、宮廷が圧迫されていられるように見えるのだろうと思うが、実際は、そう言う長い歴史を経て来ているのだから、そう言う狎《な》れた気持ちでいるようになったものである。こうした事情で、だん
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