]に対しては、性的の行事を伴うて居るところが多い。地方によつては、此中の主なるものを、田の泥にまみれさすのがある。田の神への犠牲として、生埋めにした名残りだ、と言ふ説があるが、私はまだ、其は信じられないで居る。
さをとめ[#「さをとめ」に傍線]の出ない処では、子守りが出る。初めの所作を略して、結果だけを見せるのだと考へると、解釈はつくと思ふ(赤塚の田遊びでは、よねぼ[#「よねぼ」に傍線]と言ふのが持ち出される。男子の生殖器に、手足が出来たのだと信じられてゐる様だが、生殖器に、手足の出来るのは、をかしい。やはり子守りの形だと思ふ。勿論、此が生殖器に変化したには、理由はあるのだ)。
         かけひ
田楽の方では、此らの行事が芸能化されて居る。狂言になつて行くので、其もとが、田遊びにあるのだ。此だけの事は、今も方々に残つて居るものから、断言出来る。実際に其証拠の残つて居る事は、書物の上に、たつた一箇所出て居る事よりも、確かだと言へる。書物は、総てのものを記録して居るわけではない。殊に、田舎のものなどは、見逃し勝ちである。
狂言になつて行くものを、かけひ[#「かけひ」に傍線]となづけ
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