た。其が今日では、狛を駒と解して、馬の形に変つてしまつたから、訣が訣らなくなつて了うた。さうして、獅子と共に、降伏するのか、悪魔払ひなのか、訣らぬものになつて了うたのである。
牛の代かき
次に牛が出る。此は、田の神――水の神と同じもの――の犠《ニヘ》なのだ。或は、田の神の為に働くものであつた。後には、実際に耕作の助けをしたので、行事にも、代かきに出る事になつてゐる。古くは、田の神の犠として大切がられたので、牛の肉を喰べた為に稲虫が発生した、などゝ言ふ附会説が出来たのも、やはり此が、神の食物と考へられて居た、印象から出て居るのだと思はれる。
神と精霊との問答
田遊びの行事は、此らのものが、掛け合ひの形をとつて行はれるのが普通であるが、此掛け合ひの代表的なものと見られ、特別なものと見られるのは、尉と姥の掛け合ひである。ところによつては、媼が出ないで、翁だけが、二人或は三人出るところもある。此は、一人は田主《タアルジ》――田の精霊――で、もう一人は、此精霊を降伏させ、田の物成りの保証をさせに来る、遠来神である。能楽では、此二人が、白尉・黒尉で表され、外に千
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